医療法⼈社団 中成堂⻭科医院 | ⼤正時代から埼⽟県川越市にある⻭科医院

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亡き父に作った入れ歯(2)

2003.12.10 ブログ

前回の続きになりますが、父に作った入れ歯はその後も順調に口の中で機能していきました。
抗がん剤を投与するようになった後、父は一時的に少し痩せた時期もありましたが、入れ歯に裏張り(リベース)を施すことにより、快適な食生活を送ることができました。そういう口の中の状況、および主治医の先生を始め病院スタッフの皆様の献身的な治療、さらには家族・親戚・友人の皆様の支えのおかげで、父のQOL(Quality Of Life)は最期まで質の高い、豊かなものであったと思います。
そんな父でしたが、7月22日の未明に亡くなりました。虚脱感と、慌しくとり行われる式の忙しさのために、しばらくは全く実感がありませんでした。最期の別れの時には、私が父の口の中に入れ歯を装着しました。硬く、冷たい口の中に手を入れた時、初めて父は本当に死んだのだと思いました。火葬場では担当の係りの人にお願いして入れ歯も拾っていただきました。高融点のチタンの入れ歯は溶けることなく、お骨と一緒に納められました。
亡き父に作った入れ歯は1年にも満たない期間でしたが、その役目を終え、父と一緒に眠っています。